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2010年度(平成22年度) | 資料集 | 大分県産業科学技術センター

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Academic year: 2018

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(1)

F ig.1ワイヤレス送電のモデルと回路方程式

ヤレス

送電に関する

調査と

実験装置の開発

小田原幸生

電子・情報担当

Investigation and Development for experiments on Wireless Power Transfer

Yukio ODAWARA

Electronic and Information Engineering Gr

.

ワイヤレス送電の効率的な方法として,2007年にマサチューセッツ工科大学(MIT )が公開した磁界共鳴の実証実験が契機と なり,リモート計測・制御や電気自動車の充電などの応用研究に大きな進展が見られた.そこで,これらの技術の調査を行い, 並行して実験装置の開発・試験を行い,実用性を確認した.

1.

はじ

めに

計測・制御・通信でケーブルをなくすことにより格段に利便 性が向上する.これは各分野で無線通信の利用により実現 されつつある.しかし,電源に関して,ごく小電力の伝送では 太陽電池等で実用化されているものの,容量の大きい送電 や,中・長距離のワイヤレス送電は実現が難しかった.これ に対し,2007 年に MIT が公開した磁気共鳴方式では,距 離2m の間で直径 60cm の送/受電コイルを用い,60W の 電力を約 10MHz の交流磁界により効率 40%(コイル間)で 伝送し,これまでの常識を覆した.そこで,当センターでもこ れを技術シーズとするため,調査と実験装置の開発,試験を 行 った.この結果 ,共振を用 いることにより効率 よく送電で き,十分に応用可能であることが確認できた.

2.

送電モデルの解析

ワイヤレス送電のモデルと回路方程式を F ig. 1 に示す.

i1に対 するi2,e2 の関 係を求 める.ラプラス変換 のため,

(d/dt) → s,∫ dt → 1/s 等に置き換え整理すると, I2/I1=-sM/{sL2+1/(sC2)+R2} ④

を得る.受電が次の共振条件

sL2+1/(sC2) ≒0 ⑤

により行われるようにL2,C2,周波数fを選ぶと,

I2/I1≒-sM/R2

元の式の形に戻すと, 2 1

2/i j M/R

i   (j:虚数,ω:2πf) ⑥

これより,

M j i

e2/1  ⑦

F ig. 1 の受電回路においてE1 (e1 の振幅)をほぼ一定に 保ち,出力負荷R2を変え,送電を行った結果を T able 1 に 示す.⑦式からE2はR2によらずほぼ一定であるが,実測値 との比較では,R2が 100Ω 以上で両者は合っているが,R2 が小さいと誤差は大きくなっている.これは回路定数の誤差 (表皮効果による配線抵抗の増大)や共振条件に対する送電 周波数 f の誤差などが考えられる.送電出力の実測最大値 はR2が 3Ω の時の 1. 47W である.

T able 1 電磁誘導に基づく送電の計算と実測

R2 Ω 1 3 10 30 100 300 1k

I1 A 3. 3 3. 4 3. 5 3. 6 3. 7 3. 6 3. 7

計算E2 V 4. 7 4. 9 5. 0 5. 1 5. 2 5. 1 5. 1

実測E2 V 1. 1 2. 1 3. 6 4. 4 5. 0 4. 9 5. 1

実測電力 W 1. 21 1. 47 1. 30 0. 65 0. 25 0. 08 0. 03

送電コイル,受電コイル:直径 0. 200m,4 巻

送電距離d:0. 300m,周波数f :2. 18MHz

L1: 10. 2μ H L2: 10. 1μH M: 0. 10μH C2: 518pF

39

(2)

一方,受電で共振によらない(共振コンデンサがない)場合 について述べる.④式の両辺に R2を乗じ,⑦式に対応する 形を求めると,次式になる.

e2/i1=-jωMR2/(jωL2+ R2) ⑧

これにより送 電 電 力 を計 算 した結 果 を T able 2 に示 す . T able 1 と比較すると,送電電力は共振回路を用いる方が格 段に有利であることが分かる.

T able 2 電磁誘導に基づく送電(C2 なし)の計算

R2 Ω 1 3 10 30 100 300 1k

I1 A 3. 3 3. 4 3. 5 3. 6 3. 7 3. 6 3. 7

E2 V 0. 01 0. 03 0. 10 0. 29 0. 80 1. 24 1. 36

電力 mW 0. 1 0. 3 1. 0 2. 8 6. 4 5. 1 1. 8

f :2. 18MHz C2= ∞

L1: 10. 2μ HL2: 10. 1μHM: 0. 10μH

3.

装置の開発

開発した送電装置の回路図と写真をF ig. 2,F ig. 3に,送 電コイル(1 次コイルと2 次コイル)の写真を F ig. 4 に示す.

一 般 に磁 気 共 鳴 に基 づ く電 力 伝 送 では動 作 周 波 数 は 10MHz 前後と言われ,小型化の面では高い周波数の方が 有利であるが,反面,使用できる半導体の品種が制限され, 回路素子の発熱も増大するので,今回は 2MHz とした.動 作は,外部からパルス・ファンクションジェネレータにより約 2MHz のクロック信号を入力し,パワー・インダクタLpとパワ ーMOS・F E T の働きにより,電源電圧 Vdd 10V の時,1次コ イルL1に対し交流振幅約280V を与え,振幅2. 2A の電流 を発生させている.パワーMOS・F E T の発熱が大きいので, 30mm×30mm×30mm のヒートシンクとファンにより強制空冷 を行っている.

受電装置の回路図と写真をFi g. 5,Fi g. 6 に示す.受電 装置では1次コイルで発生する磁界の一部を受け発生する 起電力により共振コンデンサC2を介しトランスTr1を駆動し,

F ig.3 送電装置の写真

Fi g. 4 送/受電コイル(1 次コイルと 2 次コイル)

F ig.2 送電装置の回路図

40

(3)

F ig.7送電回路の動作波形

PG: ハ ゚ル ス ・フ ァン クシ ョン ・シ ゙ェネ レ ー タ 信号電圧

C-I,C-V : 共振コンデンサC1電流,電圧 Dr-I,Dr-V: パワーMOS・F E T ドレン電流,電圧

(Vdd8V,受電なし,PG- Duty 50%)

F ig. 8パワーMOS・F E Tの発熱 Gate,Dr- I,Dr- V: ケ ゙ー ト電圧,ドレ ン 電流,電圧

(V dd 10V , 受電なし, PG- Duty 50%) F ig. 5 受電装置の回路図

F ig. 6 受電装置の写真

Tr1からの出力は半波整流回路を通り直流出力E2としてコン

デンサC3に充電される.この回路においてトランスは 2 つの 半波整流回路を用い,全波整流を行っている.

F ig.7 は送電装置単独での動作で,この共振コンデンサ

C1,パワーMOS・F E T の電圧・電流の変化を観察した結果で

ある.実際の送電を伴う動作では共振コンデンサ C1の動作 電圧,電流は 1次コイルと 2次コイルの結合が強いほど緩 和される.共振周波数付近での観察であるため,オシロスコ ープ・プローブや電流プローブの装着による共振周波数の 低下があり,正確ではないが,定性的に動作を把握する上 では役に立つ.また,オシロスコープ・プローブの破壊の恐 れがあるため,電源電圧 Vddは 8V と実際の定格より下げ た.

F ig. 8 は送電回路単独での動作で,パワーMOS・F E Tのド レン電圧× 電流を積算し,パワーMOS・F E T の発熱を推定し たもので,これより定格Vdd 10V では12. 5Wとなる.詳細は 掲載していないが,Vdd12V では 20W に達する.

F ig.9 は 1 次コイル/2 次コイル間距離dを0.20m,送電 出力電流 0. 5A に調整したの時のトランスTr1入力電圧,電 流 の変化 である.この電 流× 電圧 の積 算からトランス入力 4. 0Wが求まり,一方,出力E2 は6. 24V ×0. 50A=3.12Wの ため,トランスと整流回路の損失は 0. 9W で,効率は 78%とな る.

F ig.9 受電回路の動作波形

41

(4)

4.

送電試験

1 次コイルと 2 次コイルの中心軸を一致させ距離dを隔て, 送電出力電流をエレクトロニック負荷装置(菊水電子工業(株)

PLZ50- 15A)により変え,受電回路出力電圧 E2を測定した結

果をTabl e 3に示す.なお,送電回路電源Vdd 10. 0V, 送電

周波数 2. 177 MHz で,標準の設定である.送電距離 d が短

い場合は受電回路出力が大きくなり過ぎ,回路素子の定格を オーバーするため試験を行っていない.()内に記した効率は 送 電回 路電 源入力( W)に対す る受 電回路 の出 力( W)の割合 で,送電回路における全ての発熱損失,冷却ファンや整流回 路等の損失を含む.送電回路電源の電流値は効率から逆算 できるので,記載を省略した.

F ig.10 は図に記した条件下での送電電力と損失の内訳で ある.この中で最も大きいのがパワーMOS・F E T における発熱 (39%)である.次いで 1次コイル,2 次コイルでの発熱が大き い.(両方で 16%)コイルや配線の電気抵抗は直流では小さい が,2MHz では表皮効果により電気抵抗が4 倍近く増大する ためと考えられる.実際に1 次コイルに触れると意外に発熱し ていた.その他(22%)の詳細は把握できていない.

5.

おわり

開発したワイヤレス送電実験装置により,LC共振を用

い,電磁誘導のみの場合と比べ送電電力が大幅に増大で

きることが確かめ,大電力の送電を要しない計測等への

応用が可能となった.また,参考文献( 1) から,磁気共鳴

が電磁誘導の延長線上にあること,共振回路を用いれば

磁気結合の結合係数 kが小さくても 100%近い効率で(コ

イル間)電力伝送が可能であることが記載されており,

さらなる改善に向け研究を進めたい.

参考文献

( 1) 「非接触電力伝送における電磁誘導と電磁界結合の

統一的解釈」2009/ 01/ 22

居村 岳広* 内田 利之 堀 洋一(東京大学)

電気学会 産業応用部門 自動車研究会

送電距離 d 0. 150m 0. 200 m 0. 250 m 0. 300 m 0. 350 m

磁気結合係数 k 0. 041 0. 025 0. 0189 0. 013 0. 009

出力電流 0. 1 A

16. 56V

( 7. 2 %)

9. 74 V

( 4. 06 %)

5. 68 V

( 2. 37%)

3. 27 V

( 1. 33 %)

2. 13 V

( 0. 85%)

0. 2 A

14. 80 V

( 13. 5 %)

8. 96 V

( 7. 47 %)

5. 01 V

( 4. 18%)

2. 81 V

( 2. 29 %)

1. 56 V

( 1. 24%)

0. 3 A

13. 17 V

( 18. 5 %)

7. 92 V

( 10. 3 %)

4. 42 V

( 5. 53%)

2. 25 V

( 2. 76 %)

1. 04 V

( 1. 24%)

0. 4 A

11. 46 V

( 22. 1 %)

7. 03 V

( 12. 4 %)

3. 83 V

( 6. 38%)

1. 62 V

( 2. 62 %)

0. 36 V

( 0. 57%)

0. 5 A

9. 81 V

( 24. 5 %)

6. 22 V

( 13. 7 %)

3. 00 V

( 6. 17%)

0. 75 V

( 1. 53 %)

-0. 6 A

8. 19 V

( 25. 9 %)

5. 31 V

( 13. 9 %)

2. 00 V

( 4. 86%)

-

-0. 7 A

6. 59 V

( 24. 3 %)

4. 14 V

( 12. 1 %)

1. 50 V

( 4. 29%)

-

-送電回路電源電圧 Vdd10. 0 V 送電周波数 2. 177 MHz

- : 出力電圧 0V 以下

※ 効率は送電回路電源入力に対する受電回路の出力の電力比で,パワーMOS・FET の発熱,

冷却ファンや整流回路等の損失を含んでいる.

Fi g. 10 損失の内訳と測定条件

Tabl e3 送電試験の結果(出力電圧 E2 と効率)

42

参照

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